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整体の効果に差が出る理由|筋肉の硬さと改善スピードの関係

整体やマッサージを受けたとき、
その場ですぐに変化を感じる人
何度か受けても、あまり変わらないと感じる人
この違いを、不思議に思ったことはないでしょうか。

同じように体を触られているのに、
同じように「筋肉が硬い」と言われているのに、
反応の出方には、はっきりと差が出る。

この差は、
技術の問題でも、相性の問題でも、
「体質」や「年齢」だけでも説明しきれません。

実はそこには、
硬くなった筋肉が増えた体で起きている変化の違い
が関係している可能性があります。

この記事では、
特定の施術法や理論の話に入る前に、
「筋肉が硬くなった状態そのもの」に注目し、

なぜ改善の速さに差が出るのか
なぜ戻りやすい人と、そうでない人がいるのか
その背景を、体の仕組みから整理していきます。

整体の効果に差が出る理由

整体やマッサージの効果について調べると、
「一回で楽になった」
「何回も通ってやっと変わった」
「その場では良いけど、すぐ戻る」
こうした声が、当たり前のように並んでいます。

多くの場合、この違いは
「相性」「技術の差」「その日の体調」
といった言葉でまとめられてしまいます。
もちろん、それらも影響します。

ただ、それだけでは説明できないケースが
現場では数多く見られます。

同じ人の体でも、
部位によって反応が違う
日によって変化の出方が違う
そんなことも、珍しくありません。

ここで一度、
「整体の効果」から視点を外してみる必要があります。

見るべきなのは、
その人の体が、どんな状態まで積み重なっているか
という点です。

「筋肉が硬い」状態はひとつではない

「筋肉が硬い」と言われると、
ひとつの状態を想像しがちですが、
実際に触れてみると、その感触はさまざまです。

たとえば、

枯木のように、水分が抜けたような乾いた感触
堅いグミのように、弾力はあるのに形が変わりにくい感触
筋張って、指にコリコリと引っかかるような感触

これらはどれも、
「筋肉が硬くなっている」と表現される状態です。

同じ言葉で呼ばれていても、
体の中で起きている変化や、
その後の反応の仕方は同じではありません。

さらに見落とされがちなのが、
こうした硬さが一か所ではなく、複数重なっていくことで、
体全体の反応が変わっていく、という点です。

硬さが積み重なると起きる2つの変化

筋肉が一時的に硬くなっている段階では、
体はまだ自分で調整できる余地を保っています。

ところが、硬さが慢性的になり、
さらに硬くなった筋肉が増えていくと、
体の中では次第に、質の異なる変化が起こり始めます。

その変化は、大きく分けると
2つの方向に分かれていきます。

動脈側の流れが落ちると起きる変化(乾いた硬さ)

硬い筋肉が増えていくと、
まず影響を受けやすいのが、
酸素や栄養を送り込む側の流れ(動脈側)です。

筋肉の硬さが続くことで、
・血管が圧迫されやすくなる
・血液が入りにくくなる
・酸素や栄養の供給量が減っていく
といったことが起こりやすくなります。

この状態が続くと、
・筋肉の代謝が落ちる
・エネルギー産生が低下する
・水分を保持する力が弱まる
といった変化が重なり、
筋肉の質そのものが変わっていきます。

触れたときに感じるのは、
枯木のように乾いた感触
弾力が乏しく、反応が返ってこない硬さ
です。

この段階では、
「足りなくなっているもの」が補われることで、
・その場で少し変化を感じる
・温かさが出る
・動きが出る
といった反応が起こりやすく、
比較的、改善が早いと感じられることも多いのが特徴です。

静脈・リンパ側が滞ると起きる変化(しこりのある硬さ)

硬さがさらに積み重なると、
今度は使われたあとのものを回収する側、
つまり静脈やリンパの流れが影響を受けやすくなります。

筋肉の動きが減り、
硬さが続くことで、
・老廃物や代謝産物が流れにくくなる
・余分な水分が溜まりやすくなる
・慢性的な低酸素状態が続く
といった状態が重なっていきます。

この状態が長く続くと、
体は「元に戻す」よりも、
別の形で安定させようとする方向に傾きます。

その結果、
萎縮した筋肉隙間に脂肪組織が増えていく
いわゆる脂肪置換が起こりやすくなります。

触れたときに感じるのは、
・堅いグミのように、しこりとしてまとまった硬さ
・押そうとしても圧が入りきらず、グリングリンと逃げる感触
・筋張って、一つの塊として存在しているような感覚
です。

この段階では、
押せば緩む、という反応は起きにくく
変化が出るまでに時間がかかる
という特徴が現れます。

改善の速さが変わる理由

整体やケアを受けたとき、
変化の出方には大きく2つの感覚があります。
・その場ですぐに変わったと感じる
・変わっているはずなのに、実感までに時間がかかる

この違いは、
「効いている・効いていない」の差ではありません。
多くの場合、
体の中で起きている変化の段階の違いです。

供給が落ちている段階では、
必要なものが届くだけで反応が出やすくなります。
一方で、
滞りが積み重なり、
組織そのものが変わり始めている段階では、
変化はゆっくりと進みます。

血流改善だけでは変わらない理由

血流は、
酸素や栄養、老廃物を運ぶことはできます。

しかし、すでに別の性質に変化し、
組織として固まってしまったものを、
血液の流れだけで元に戻すことはできません。

血流は「運ぶ役割」は担えますが、
別のものに置き換わってしまった組織を、
それだけで元に戻せるわけではない、
ということです。

なお、ゼロ化整体では、
こうした「硬さが戻りやすい状態」の背景に、
「筋肉ロック」と呼ばれる反射的な固定パターンが
関与していると考えています。

この視点を持つことで、
改善の進み方への理解がより深まる可能性があります。

詳しくは別の記事で解説していますので、
興味のある方はぜひご覧ください。

この違いを知らないまま続けるとどうなるか

体の段階を知らないままケアを続けると、
・効果が分からなくなる
・自分の体を疑ってしまう
・ケアそのものを信じられなくなる
といったことが起こりやすくなります。

それは、
体が悪いからではありません。
判断の基準が合っていないだけです。

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まとめ

改善が早い・遅いは、
体の能力の差ではありません。

それはただ、
今の体が、
どんな順番で戻ろうとしているか
その違いにすぎません。

そのことを理解することは、
体を変える前の、
最も大切な準備です。

参考文献・関連研究

本記事の内容は、以下の研究・文献に示されている知見と、
臨床現場での観察結果を照らし合わせながら整理しています。

・Hamrick MW et al. (2016). Fatty infiltration of skeletal muscle. Frontiers in Endocrinology.
・McDermott MM et al. (2020). Skeletal muscle pathology in peripheral artery disease. ATVB.
・Ryan TE et al. (2016). Ischemia–reperfusion timeline in skeletal muscle. AJP Cell Physiology.
・Eberhardt RT, Raffetto JD. (2014). Chronic venous insufficiency. Circulation.
・Pagano AF et al. (2018). Short-term disuse and fatty infiltration. J Cachexia Sarcopenia Muscle.

※ 本記事は特定の治療効果を保証するものではありません。

執筆者情報

鮎川史園(あゆかわ しおん)
ゼロ化整体 開発者・代表セラピスト

筋肉ロック理論の研究に15年以上携わり、ゼロ化整体を独自開発。2万人以上の施術実績を持ち、著書4冊(累計6万部)を出版。武学融合技術による独自アプローチで、慢性痛の根本改善をサポートしています。
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